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社員のモチベーション向上に役立つ? ストックオプション活用法

企業が、役員・社員向けのインセンティブとして、ストックオプション制度を導入していることがあります。
ストックオプション制度とは、会社の役員や従業員に対し、自社株を将来的に決められた価額で取得する権利を与えるもので、将来的に株が値上がりすれば、その分の利益がインセンティブ報酬になります。
現時点で資金的な余裕のない企業でも取り入れることのできる制度で、従業員のモチベーションの向上なども期待できます。
今回は、人事的な側面から、ストックオプション制度のメリットや注意点などを解説します。

ストックオプション制度の仕組み

ストックオプション制度は、主に成果を上げた社員に対して支払われる報奨金(インセンティブ)の一つとして活用されており、従業員の仕事に対するモチベーションを上げる目的もあります。

経営者が、成果を上げた従業員にストックオプションを付与し、従業員は会社の株価が上昇したタイミングで、最初に定められた金額の自社株を購入して、売ることができます。
その購入金額と売値の差額が、従業員の利益となるわけです。

たとえば、『むこう3年間であれば、いつでも自社株を1株800円で1,000株まで購入できる』という条件のストックオプションを従業員に付与したとします。
その後、業績が好調で、2年後には1株が2,000円にまで上昇しました。
従業員は、その時点でストックオプションの権利を行使すれば、1株2,000円の自社株を取り決めどおり、1株800円で購入することができます。

1,000株すべて購入するのであれば、200万円分の株を80万円で購入した計算となり、すぐに売ってしまえば、その従業員は差額の120万円を手にできるというわけです。

期限内に業績が伸びなければストックオプションの権利を行使しないことも可能なので、付与された従業員が損をすることはありません。

資金に余裕がなくても導入できる

ストックオプションのメリットとしては、会社の業績を伸ばすことが従業員自身の報酬につながるため、仕事へのモチベーションの向上が期待できます。
会社に残るという条件付きで権利を付与すれば、優秀な人材の流出防止にもつながります。

また、会社の株価が直に影響するインセンティブ制度なので、従業員が当事者意識を持って自社の経営について考えるようにもなるでしょう。
ストックオプションが従業員に対して経営的な視点でものごとを考えさせる効果をもたらし、将来的なリーダーの育成に役立ったというケースもあります。

人材育成の面から見ても、ストックオプションは効果的な制度といえるわけです。

そして、ストックオプションの最大のメリットが、将来的な株価の上昇に伴って自社株を売る権利を付与する制度なので、現時点で資金的な余裕がなくても扱えるという点です。
株式公開を目指している中小企業やベンチャー企業など、資金繰りに不安のある会社でも、従業員にインセンティブ報酬を与えることができます。

優秀な人材を確保するためには、ぜひとも導入しておきたい報酬体系ではないでしょうか。
アメリカなどでは、ストックオプションを導入して外部から優秀な経営者や役員を呼び寄せることが、経営戦略の一環として当たり前になっています。

制度を導入する際に注意したいこと

さまざまなメリットのあるストックオプションですが、導入するうえでの注意点もあります。

まず、株価の変動が直接報酬額に影響するため、外的要因(経済が悪化した、提供するサービスに関する規制が強化されたなど)で株価が下がってしまったときに、従業員のモチベーションが保てなくなってしまう可能性があることです。
頑張って働いたにもかかわらず、株価が上昇せず報酬につながらなければ、やる気を失ってしまうのは自然なことです。

また、ストックオプションを付与された従業員と付与されなかった従業員との間で不公平感が出てしまうという問題もあります。
原則的にストックオプションはインセンティブなので、結果を出した社員に付与することになりますが、その基準を明確にしておかないと、ストックオプションを付与されない社員の不満が溜まってしまうことになります。

ストックオプションは、企業と従業員の双方にメリットがある一方で、扱い方を間違えると、デメリットをもたらすこともあります。
導入は、役員や従業員の意見などを聞いて、慎重に進めていきましょう。

※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。